成年後見制度の基本理念

成年後見制度は、高齢社会への対応と知的障がい者・精神障がい者の福祉の充実の観点から「自己決定の尊重」、「残存機能の活用」、「ノーマライゼーション」の3つを基本理念としています。

 

自己決定の尊重

認知症、知的障がい、精神障がいであっても「自分のことは自分で決める。」ということを尊重します。

認知症になったからといって、他人がすべてを決めてしまうわけではなく、できるだけ本人の自己決定を尊重するという考え方です。

 

残存機能の活用

障がいがあっても、残された機能を発揮することができる能力を残存機能の活用といいます。

支援する人が、ご本人の「できること」「できないこと」を見極め、「できないこと」の支援を行います。

 

ノーマライゼーション

ノーマライゼーションとは、障がいのある人もない人も当たり前の生活を目指すという考え方です。

1940年代後半のデンマークから始まり、その後、世界の障害者福祉を方向づける重要な理念となっています。

 

成年後見制度の種類

成年後見制度には「法定後見」「任意後見」の2種類があります。

二つの制度の大きな違いは、法定後見は、本人の判断能力が低下した後に家庭裁判所が後見人等を選任するのに対して、任意後見は、本人が判断能力を有する時に、自分で信頼できる人と契約をするという点です。

 

法定後見制度

認知症や知的障がい、精神障がいといった精神上の障がいによって、判断能力が不十分な人の財産管理や身上監護に関する事務を、家庭裁判所から選任された成年後見人等が支援する制度です。

法定後見制度は、本人の判断能力の状態によって、後見、保佐、補助の3つの類型を定めています。

後見の対象者

自己の財産を管理・処分することができない程度に判断能力が欠けている者をいいます。

保佐の対象者

自己の財産を管理・処電話分するには常に援助を必要とする程度の判断能力しか有しない者

補助の対象者

判断能力が不十分であるものの後見や保佐の対象となる程度に至っていない比較的軽度な認知症や精神上の障がいを有する者

 

法定後見開始までの手続きの流れ

手続相談

認知症等であるご本人の住所地の家庭裁判所で手続の相談を行います。

申立ての手引きや必要書類を受領します。

 

申立て

家庭裁判所に手続書類を提出し、後見開始の審判の申立てをします。

申立ては、本人、配偶者、四親等以内の親族などが申立て人となることができます。

 

事情聴取

家庭裁判所での申立当日、申立人及び後見人候補者に対する事情聴取が行われます。

本人が同席している場合には、本人の状況確認も行われます。

 

審判

家庭裁判所が、①後見等の開始、②後見等の選任について決定します。

家庭裁判所の判断で後見人候補者以外の者が選任されることがあります。

 

任意後見開始までの手続きの流れ

任意後見契約締結

任意後見人を依頼したい人を探して任意後見契約を締結します。任意後見契約書は公正証書で作成します。

【任意後見契約での公正証書作成の費用】

・手数料として1契約あたり 11,000円(証書の枚数が4枚を超えるときは1枚超過ごとに250円が加算)

・登記嘱託手数料 1,400円

・登記印紙代 2,600円

病院で作成する場合は、公証人の日当・交通費等は別途必要

以上から最低でも15,000円程度の費用がかかります。

任意後見契約締結支援を専門家に依頼する場合は、その報酬が別途必要になります。

 

家庭裁判所へ対し任意後見監督人の選任申立

本人の判断能力が低下してきたら、家庭裁判所に任意後見監督人の選任申立をします。

多くの場合、後見人予定者が申立てをします。

 

後見開始

審理の結果、本人の判断能力が不十分と認めらたら任意後見監督人が選任され、任意後見人が後見契約に基づいて業務を開始します。

 

後見の終了

本人や任意後見人が死亡した場合、任意後見は終了します。また、任意後見人が解任されたり、任意後見人が辞任したりした場合も修了します。任意後見人の死亡や解任・辞任により、後見人がいなくなった場合は、法定後見を申し立てて成年後見人などをつける必要があります。

 

任意後見制度

任意後見は、判断能力に問題のない人が、自分の意思で任意後見人を探して任意後見契約を締結し、将来認知症などによって判断能力が低下したときに後見をしてもらうための制度です。

 

 

認知症になったときの財産管理や介護保険制度の知識など、あらかじめ準備できることはたくさんあります。

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