【高齢者虐待防止】事業所のケアを振り返る大切さ
本日、ある社会福祉法人の高齢事業の職員向けに高齢者虐待防止についてお話をしてきました。
介護職向けに虐待防止のお話をするときは、法令で定められている虐待、身体拘束の定義などをお伝えした後、必ず、事業所のケアを振り返ってもらっています。
なぜ、振り返りが大切かについて書いていきます。
なぜ介護職員による虐待が起きるか
介護職員に虐待は、突然起こるわけではないと思います。
虐待まで至らない「不適切なケア」や「不適切なケアが許容される環境」があって、その結果起こる最悪の状態が虐待と考えます。
虐待や身体拘束と異なり、「不適切なケア」には、法令上の定義はありません。
ですので、自分たちの頭で考えなければなりません。
先日、不適切なケアについて尋ねたところ、
「ウチの事業所では、不適切なケアはありません」
という人がいました。
普段、あまり考えたことがないと難しいかもしれませんね。
私は、適切なケアばかり提供している事業所はないと思っていて、むしろ「自分の事業所のケアは間違っていない。」と考えることは、少し危険だなと思います。
施設の常識は社会の非常識?
ある特別養護老人ホームの施設長と話していると「『施設の常識は社会の非常識』って言われています。」と話していました。
確かに、私も高齢者施設で長く勤務していましたが、実社会と離れた施設独自のルールがたくさんありました。
例えば、
「食事は全量摂取すること」
「全員が早寝早起きをしなければならない」
「決められた時間にトイレに行く」
などなど。
このようなルールにご利用者を当てはめようとするわけですから、当然、拒否されることもあります。
そして、その結果、
「無理やり食事を食べさせる」
「無理やり起こす」
「無理やりトイレに連れていく」
といった状況になります。
事業所のケアを振り返ることがなぜ虐待防止につながるか?
平成30年度の介護報酬改定で、特別養護老人ホームやグループホームなどの入居系の事業所は、介護職員等に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施することが義務付けられました。
どの事業所も「研修」をやっていると思います。
どのような研修をしていますか?
介護事業所の職員に「虐待はいけません。」と伝えても、はっきり言って効果はないと思います。
なぜなら、そんなことは誰でも知っているからです。
むしろ、「そんなことのためにわざわざ時間をとるな!」と参加している職員から怒られてしまいそうですね。
また、高齢者虐待防止法に定められている虐待の定義や身体拘束の類型などを理解することは大切ですが、それだけでは効果に乏しいと思います。
介護の現場は、常に忙しい現場です。
それは、私が介護職をやっていた20年前から変わりません。
忙しい現場だからこそ、日々自分たちの仕事を振り返らないと、適切なケアなのか不適切なケアなのか分からないまま流れていってしまいます。
忙しいからこそ振り返り、もし不適切なケアがあったらその芽を摘み取らなければなりません。
介護は、上司から言われてやるものではなく、介護職自らが考え実践しなければなりません。