任意後見人は、認知症などにより判断能力が低下した人の財産を管理や、介護サービス事業所との契約締結など、本人から事前に委任された事務を行います。

任意後見人の資格について、法律上特に規定はありません。

任意後見人を検討する際、考慮すべき内容について書いていきます。

自然人(人間)

任意後見人は、本人(認知症などによって判断能力が低下した人)の親族や知人でも可能です。

親族や知人に依頼することができない場合には、法律や福祉の専門家が行う場合もあります。

ただし、任意後見受任者が次の者である場合には、任意後見人として、本人の財産を管理することが困難だと考えられるため、任意後見監督人が選任されず、任意後見契約は開始されません。(任意後見契約に関する法律4条1項3号)

〇未成年者

〇家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人

〇破産者

〇行方の知れない者

〇本人対して訴訟をし、またはした者およびその配偶者ならびに直系血族

〇不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者

これらの者に該当しなければ、任意後見候補者となることは可能です。

しかし、任意後見契約は、任意後見人に、自分の大切な財産の管理や終の住み家になるかもしれない老人ホームの利用契約の締結を依頼する契約です。

任意後見候補者に対する信頼がなければ、これらを依頼することはできないと思います。

また、任意後見契約は、契約締結後ご本人が認知症などにより判断能力が低下したときに支援するための制度です。

したがって、継続した支援が受けられるように、任意後見候補者の年齢や健康状態も考慮する必要があります。

法人

法人は、自然人(人間)と同じように権利義務の帰属主体となることができます。

例えば、老人ホーム利用契約では、事業所の施設長や職員が一人の人間として、ご利用者と契約をしているわけではなく、社会福祉法人や株式会社、NPO法人など法人が契約主体となっています。

任意後見契約でも、法人が本人と契約を締結することは可能です。

法人が任意後見人となることのメリットとして、長期に渡り持続的な支援が可能であることが挙げられます。

任意後見契約の場合、契約を締結してから数年~数十年後に契約の効力をもつこともあります。

自然人(人間)との、任意後見契約では、任意後見受任者の方が先に判断能力が低下したり、死亡していることもあるかもしれません。

そのような場合には、任意後見契約を締結していても、支援することできません。

法人が契約主体になった場合には、法人が存続している限り継続した支援が可能となり、上記のような問題は生じません。

ただし、法人との契約では、対応する担当者が異動や退職のため変更になることが考えられます。

担当者が変更になっても、当然法人との契約は継続しますが、対応する担当者との関係性を構築していかなければなりません。

複数任意後見人

複数の者を任意後見受任者として任意後見契約を締結することもできます。

例えば、財産管理を専門職後見人に任せ、介護サービスの契約や利用料の支払いなどの身上監護は子や甥姪など親族に任せるという方法もできます。

しかし、任意後見人や任意後見監督人が複数選任された場合、その分の報酬を負担しなければならないというデメリットがあります。

まとめ

以上の任意後見人について見てきました。

前述したように、任意後見人の資格について法律上特に決められているわけではありません。

しかし、任意後見契約は、自分の財産を管理や、老人ホームの入居契約締結などを委任するとても大切な契約です。

継続して自分の人生の総仕上げを任せることができる信頼があるか、任意後見人候補者は、慎重に検討する必要があると考えます。

最後までお読みいただきありがとうございました。