10月16日、NHKクローズアップ現代で放送されていた「徹底討論!それでも必要?一般病院の¨身体拘束¨を見ました。

番組では、身体拘束廃止に取り組んでいる病院関係者と医療機関では身体拘束が必要と考える人が出演し、お互いの立場で身体拘束について話したり、身体拘束を廃止するための職員研修などのVTRを流したりしていました。

私は、これまで約20年間、認知症対応型グループホームや特別養護老人ホームで仕事をしてきました。

利用している人の状態や人員配置など医療現場と介護現場の違いはあると思いますが、身体拘束について考えることについて書いていきます。

介護サービス事業所の身体拘束廃止

私が、介護福祉の仕事を始めたのは、介護保険制度開始前です。

この頃は、介護福祉の分野では身体拘束は当たり前のように行われていました。

今では考えられませんが、4点柵を設置し忘れた時には、ヒヤリハット報告書を提出するような時代でした。

しかし、2000年から始まった介護保険制度では、切迫性、一時性、非代替性の3要件を満たさない身体拘束は禁止となります。

つまり、「介護保険制度の身体拘束禁止」という外からの圧力がかかり、各事業所は廃止に向けた取り組みを始めたという状況です。

その当時、私も含め今まで身体拘束を行うことに慣れていた職員たちは、

「事故が起きたら誰が責任を取るの?」

「人手不足の中で、なんでそんなことをしなければならないの?」

などと声が多く聞かれました。

職員の責任

利用者・患者のケアに当たっている人がこのように考えるのは当然かと思います。

では、職員は責任を負わなければならないのでしょうか。

法的責任

職員の中には、利用者(患者)が転倒や自己抜去をした場合には、個々の職員が法的な責任(損害を金銭で賠償する責任)を負わなければならない、裁判になって罪に問われるのではないか、と考えている人も少なくありません。

しかし、転倒等によって利用者(患者)に損害が発生した場合、事業所(法人)が法的な責任を問われることはあるかもしれませんが、個々の職員が法的責任を負うことはまず考えられません。

ヒヤリハット報告書

事故を発見した職員は報告書を提出することが求められます。

しかし、この報告書は、決して発見した職員に特別の責任を負わすものではありません。

しかし、この報告書の趣旨は、1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するというハインリッヒの法則に基づいて、「ヒヤリ」、「ハッと」した段階で背景を考えチームで共有化することにより、重大事故を防止するためのものです。

報告書を提出することが何か後ろめたいと思うことはありません。

むしろ、提出した職員は、褒められるべきです。

重大事故

 

 

 

 

 

 

 

職員の考え方

身体拘束廃止の取り組みをすることによって職員の考え方が変わりました。

最初にも書きましたが、介護の場合は、介護保険制度が契機となり身体拘束廃止の取り組みが始まりました。

その当時、身体拘束廃止に反対していた職員が今でも廃止に反対しているかというとそんなことはありません。

逆に、「昔のように身体拘束をする」となったら、はっきりと「NO」というのではないかと思います。

最後に

近代看護教育の母と言われているナイチンゲールはこんな言葉を残しています。

「看護を行う私たちは、人間とはなにか、人はいかに生きるかをいつも問いただし、研鑽を積んでいく必要がある。」

ベッドや車いすの上で縛られている「人」、働いている「人」。

お互いに「人」として尊重されるように、「人」が「人」をケアするというケアの本質について考え続けることが重要だと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。