認知症になると「もの忘れ」が目立つようになると言われます。
確かに、「もの忘れ」はアルツハイマー型認知症では典型的な中核症状に挙げられています。
一方で、認知症ではなくても年齢を重ねることで、忘れっぽくなるといったこともあります。
では、認知症の人のもの忘れと生理的な老化とはどこが違うのでしょうか。
以下にまとめてみました。
生理的老化 | 認知症の症状 |
体験の一部を忘れる | 体験の全体を忘れる |
もの忘れを自覚している | もの忘れの自覚に乏しい |
見当識障害はみられない | 見当識障害がみられる |
徐々にしか進行しない | 進行性である |
日常生活に支障はない | 日常生活に支障にきたす |
目次
経験の一部を忘れる・経験の全体を忘れる
認知症のもの忘れは、経験自体を忘れてしまうということが特徴があります。
例えば、生理的なもの忘れでは、昨晩食べた夕食の内容を忘れてしまっても、夕食を食べたこと自体は覚えています。
しかし、認知症によるもの忘れでは、夕食を食べたという経験自体を忘れてしまいます。
もっと、極端なことをいうと、5~10分前に食べた食事のことも忘れていることがあります。
記録障害は、脳の障害が原因で起こる症状ですので、何とか正そうとしたり、思い出させようと必死に説明しても効果がないことが多いです。
また、忘れたことで認知症の人を否定するような言葉かけをしても、認知症の人にとっては、なぜそのようなことを言われるのかわからない状態だと思います。
ですので、もの忘れを責めずに対応することが望ましいといえます。
物忘れを自覚している・物忘れの自覚に乏しい
生理的なもの忘れがある人は「最近、物忘れが多くて…」と自覚していることが多く、もの忘れをした場合のことを考えた行動をします。
例えば、薬を飲んだか分かるように日付ごとに分けたり、用事をメモに書いて分かりやす所に貼っておくなどです。
しかし、認知症の人の場合、自分が忘れているという自覚が乏しいので、忘れた時のことを考えて行動することは少ないです。
なので、薬を飲んだのに「まだ、飲んでいない。」と言ったり、何日も飲まないことがある、といったことが起こります。
ただ、認知症の人も自覚が乏しいだけで、自覚がまったくない、というわけではありません。
認知症の人は、日常生活の中で「私、バカになっちゃった。」「何がなんだかわからなくなっちゃった。」となどと話すことがあります。
これは、物忘れを含め、自分の中で何かがおかしい、ということは自覚をしているのだと思います。
見当識障害が見られる・見当識障害が見られない
見当識障害とは、本人がいる場所や、時間、人などの状況を正しく理解できなくなることです。
認知症の人は、見当識の障害がみられることが多くあります。
例えば、毎日通っている道でも、ある日突然、家に帰るまでの道順が分からなくなってしまったり(場所の見当識障害)、夜中なのに「おはよう」と言って、パジャマから洋服に着替えたり(時間の見当識障害)、自分の息子を弟だと思ったり(人の見当識障害)といったことが見られることがあります。
徐々にしか進行しない・進行する
認知症の場合、軽度・中等度・重度といったように進行します。
最も多いアルツハイマー型認知症の場合、
軽度:短期記憶の障害が目立つようになる。また、約束の時間を間違えたり車の運転ができなくなったりする。
中等度:昔のことも思いだせなくなる。外出先から家に戻ることができなくなったり、入浴や着替えなどにも介助が必要になったりする。
重度:意思の疎通が困難になる。身体機能の低下が見られ、寝たきりの状態になる。食事、入浴、排泄など介助が必要になる。
といったように、約10年のかけて徐々に進行していくことが多いのが特徴的です。
日常生活に支障を及ぼす・日常生活に支障を及ぼさない
認知症の人の場合、もの忘れの回数が増え、その程度もひどくなる。
同じものを何度も購入したり、約束を忘れてしまったりと日常生活全般に支障がでるようになる。
以上、生理的な老化と認知症の症状をみてきました。
最後までお読みいただきありがとうございました。