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【介護事故】介護職員は責任を負うか?

介護事業所で働いている職員にとって、ご利用者の転倒や転落、誤嚥といった事故を未然に防止し、安全に日々の生活を送っていただくことは、大切な業務の一つです。

しかし、介護事業所は介護が必要な方がご利用する施設であり、そこで働く職員の数にも限りがあるため、事故をゼロにすることはとても難しいことです。

介護事業所の中で介護職員は、最もご利用者に近くで仕事をしています。

したがって、介護職員は、転倒や誤嚥などの事故と常に隣り合わせになっていると言えます。

では、介護職員が事業所内で起こった事故に遭遇した場合、その職員個人は、責任を負うことになるのでしょうか。

ここでは、介護職員の「責任」というものを整理して書いていきたいと思います。

介護職員の方が安心して仕事ができるお手伝いができればと思います。

 

行政責任

まず、行政上の責任から見てみましょう。

介護職員個人と行政上の責任の関係では、介護福祉士資格に関するものがあります。

転倒事故に遭遇した介護福祉士は、見守りが出来ていなかったことを理由として、介護福祉士の資格を失うことになるのでしょうか?

介護福祉士資格は、社会福祉士及び介護福祉士法という法律で定められています。

この法律の第3条には介護福祉士の欠格事由が明記されています。

社会福祉士及び介護福祉士法

第3条(欠格事由)

次の各号のいずれかに該当する者は、社会福祉士又は介護福祉士となることができない。

一 成年被後見人又は被保佐人

二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者

三 この法律の規定その他社会福祉又は保健医療に関する法律の規定であつて政令で定めるものにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者

四 第三十二条第一項第二号又は第二項(これらの規定を第四十二条第二項において準用する場合を含む。)の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者

法律上、このような欠落事由がない限り、介護福祉士の資格がなくなることはありません。

ですので「見守りが不十分だった」という理由で、行政上の責任を負うことはありません。

刑事責任

介護職員が業務に関連して、刑事責任を負う可能性があるものとして「業務上過失致死傷罪」が挙げられます。

刑法

第211条 (業務上過失致死傷等)

業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

2019年3月、特養で働く准看護師に次のような判決がありました。

長野県安曇野市の特別養護老人ホーム「あずみの里」で、2013年12月に入居者の女性Aさん(85歳)が、おやつのドーナツを食べた後に意識を失い、約1か月後に死亡した事故で、長野地裁松本支部は、注意義務を怠ったとして業務上過失致死罪に問われた松本市の准看護師に対して、求刑通り罰金20万円の有罪判決を言い渡しました。

この裁判は、介護施設での事故で職員の刑事責任が問われた異例の裁判です。

私も、これまで20年近く高齢者福祉に携わっていますが、悪質な虐待以外での刑事裁判は、初めて聞きました。

弁護側は、判決を不服として即日控訴していますので、今後も注目していきたいと思います。

民事責任

勤務中に転倒事故が起こった場合、見守りを怠ったとして民事責任を負うのでしょうか。

民事上の責任とは、被害者に与えた損害を賠償する責任です。

介護保険制度はご利用者と介護事業所との福祉サービス契約によるものです。

個々の介護職員は、ご利用者との契約関係にありませんので、介護職員は契約上の責任は負わず、過失があれば、不法行為責任を負うことになります。

民法

不法行為(709条)

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

介護職員に不法行為責任が生じ、損害賠償請求されるのでしょうか。

実際、ご利用者やその家族が介護職員に対して裁判を起こすかというと、介護職員の対応がよほど悪質でない限り、資力の乏しい介護職員個人に対して裁判を起こすことはほとんどないと思います。

道義的責任

道義的責任とは、人としての正しい道を守るべき責任のことです。

この道義的責任は、前の3つの責任と異なり法的責任ではありません。

これまで見てきたように、介護事故によって介護職員が法的責任を取らなけばならないことはよほど悪質でない限り、ほとんどないと考えられます。

しかし、一番最初にも書いたように、介護職員はご利用者の一番近くにいる存在です。

そこで、介護事故が起こった場合、期待された役割を果たせず不幸な結果を招いたことに対する職業上の責任を感じることは当然といえます。

むしろ、このような責任を感じないという人は介護職員に向いていないのではないでしょうか。

介護事故が起こってしまった場合、ご利用者やご家族に対して、法的責任とは異なる道義的な責任を真摯に認め、謝罪をしたり、再発防止のためにしっかりと対策を考えたりする責任は介護の仕事に携わる者としてなくてはならないことだと思います。

 

以上、介護職員の責任についてみていきました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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プロフィール

  
スター行政書士事務所 山田拓郎
神奈川県相模原市

日本大学大学院法務研究科中退

介護職出身の行政書士

介護福祉士・介護支援専門員・認知症介護指導者・上級リスクマネージャー

約19年の高齢者福祉分野での経験を生かして

「自分の思い描いた理想の福祉を実践したい」

という志しのある人の事業所設立を支援

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