私は、現在行政書士を仕事にしていますが、その前は、特別養護老人ホームの生活相談員やケアマネジャーとして、ご高齢者に関する相談を受けてきました。

ここでは「子どもがいない人が認知症になったら」ということを書いていきます。

これを読んだ人が、認知症になった時でも安心して暮らせるようなお手伝いができれば幸いです。

 

認知症の人は増加します

厚生労働省の発表によると、認知症の人の数は2025年には、約700万人になるとされており、65歳以上の人の約5人に1人が認知症になる計算です。

この数字を見ればわかるように、高齢になって認知症になるということは、特別なことではありません。

しかし「認知症になったらどうしよう…。」などと過度に心配する必要はありません。

認知症になっても、素敵な生活を送っている方はたくさんいますのでご安心ください。

 

認知症とは

まず「認知症とはなにか」ということをみてみましょう。

認知症の代表的なものにアルツハイマー型認知症があります。

その数は全体の50%とも言われています。

アルツハイマー型認知症の主な症状として記憶障害や判断力の障害が挙げられます。

また、アルツハイマー型認知症の人は、それらの自覚症状が乏しいといった特徴があります。

例えば、アルツハイマー型認知症の人が「最近何か変だ、おかしい。」と思っていても、それが認知症が原因していると自覚しておらず、他の人に相談したり、受診したりという判断が難しくなります。

人と関わる機会を作る

このように認知症になると自ら他の人に相談することが難しくなるといった特徴があるため、多くの場合、認知症になったということは、本人ではなく周囲の人が気が付きます。

ご夫婦のどちらかが相手の認知症の症状に気が付いて、介護や医療の専門職に相談できれば良いですが、アルツハイマー型認知症は徐々に進行するため、高齢ご夫婦の場合、気が付かないこともあるかもしれません。

そのため、できるだけ周囲の人と関わりをもって、自分たちの変化に気が付いてもらえる環境を作っておくことが必要になってきます。

友人(ご近所の人)

子どもや親戚がいない場合、普段から、友人(ご近所の人)、民生委員と関わりをもっておくことが大切だと思います。

しかし、いくら頼りになる友人といっても、その人自身が高齢だったり、病気を抱えていることも少なくありません。

また、善意で支援をしてくれる人だけではないことも事実です。

私が、これまで相談を受けた中には、近所の人にキャッシュカードを渡してしまった結果、勝手にお金を使われてしまったり、家にあった貴金属がなくなってしまったりとしたケースがありました。

ですので、友人を頼るとしても、どこかで限界があることを理解しないといけません。

高齢者支援センター

友人以外で支援してくれる機関としては地域の高齢者支援センター(地域包括支援センター)があります。

高齢者支援センターでは、高齢者に関する相談窓口の他に、定期的に体操やサークル活動、カフェなども行っていますので、普段からそのような行事に参加して顔なじみの関係を作っておくことも良いと思います。

しかし、大勢の中で体操やサークル活動などをやることは苦手です、という人もいると思います。

そのような場合は、高齢者支援センターの職員が自宅に電話をしてくれるサービスなどもありますので、困ったことや心配事は、まず高齢者支援センターに相談することをお勧めします。

このように、友人や高齢者支援センターの支援を受けながら生活をすることは可能ですが、徐々に、介護サービスが必要になってくることが考えられます。

次に介護サービスについてみてみましょう。

介護保険サービス

認知症で介護が必要な状態であれば介護保険サービスが利用できます。

認知症になると、同じものを買う・料理の手順が分からない・家の中の掃除ができない、などといった症状が出てきます。

そのような場合は、訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用し、日常生活に必要な日用品や食材の買い物、料理、掃除、洗濯の援助をしてもらうことが可能です。

また、相模原市では配食サービス(1食500円)を実施していますので、安否確認を含めて利用するという方法もあります。

また、認知症になると自分からは入浴しない場合があるので、そのようなときはデイサービスを利用し入浴することができます。

訪問ヘルパーやデイサービスのような介護保険のサービスを利用した場合、原則として1割は自己負担になります。(所得によっては2・3割になることもあります。)

例えば、要介護1で、食材の買い物代行や調理、配膳、片づけの訪問ヘルパーを1回45分週3回利用し、デイサービスを週2回利用した場合、1カ月の自己負担金額の目安は8,000円程度になります。

私は、これまで「介護保険サービスを利用したくない。」とサービスを拒否し、家族以外の支援を受けないで生活する人を見てきました。

介護サービスを利用したくない理由は、

①ご本人に自分が介護が必要になっているという自覚症状がない。

②「皆でレクリエーションをするデイサービスが合わない。」などです。

①のような場合は、担当のケアマネジャーや介護サービス事業所の担当者などとよく相談をし、ご本人に無理のないように声掛けをし、サービスにつなげられるようにしたほうが良いでしょう。

②については、ケアマネジャーが、ご本人に合った介護サービス事業所を調整してくれるので、ご自分に合った事業所と契約し、介護サービスを利用したほうが良いと思います。

お金のこと

先ほども書きましたが、アルツハイマー型認知症になった場合、主に記憶障害や判断力の低下といった症状が出現します。

それらの症状により、特殊詐欺や悪質な訪問販売業者の被害に合う可能性があります。

私が相談を受けた中には

「数千万円をかけて必要のないリフォーム工事をしてしまった。」

「通信販売で服や日用品を大量に購入してしまい、一度も使っていない商品が袋に入ったままの状態で山積みになっていた。」

などといったケースがありました。

このようなことが起こらないようにするためには、第三者に金銭管理を依頼する方法があります。

1つは成年後見制度を利用することです。

成年後見制度は、判断能力が低下した人を保護するための制度です。

成年後見制度の詳細はこちらから

また、相模原市の社会福祉協議会では、判断能力が不十分な高齢者のために、金銭管理や定期預金の預かっていますので、社会福祉協議会に財産の管理を依頼するという方法もあります。

また、相続のことについても考えおく必要があります。

夫婦に子どもがいない場合、財産を相続する人は、妻(夫)、父母、兄弟姉妹なります。

例えば夫が死亡した場合、その財産を相続するのは、妻及び父や母または兄弟姉妹になります。

認知症になる年齢の場合、父や母はすでに他界していることが多いと思いますので、相続人は妻と兄弟姉妹となります。

妻と兄弟姉妹が相続する場合は、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4の割合になります。

もし、妻に全財産を相続させたい場合は「自己の財産全部を配偶者に相続させる」旨の遺言書を作成しておく必要があります。

また、相続する人がまったくいない場合には、原則として遺産は国庫に帰属します。

普段からお世話になっている方に、「財産を分けたい。」ということであれば遺言書を作成しておく必要があります。

老人ホームを利用する場合

これまで書いてきたように、色々な人の支援を受けながら自宅でご夫婦で暮らし続けることは可能です。

しかし、認知症の進行や身体機能の低下によって、自宅での生活が難しくなる時がくることも想定しておく必要があります。

そのような時は、老人ホームに入居するという選択肢があります。

認知症の人が入居できる主な老人ホームは、特別養護老人ホームや認知症高齢者グループホーム、介護付き有料老人ホームがあります。

それぞれの老人ホームの特徴は以下の通りです。

特別養護老人ホーム グループホーム 有料老人ホーム
入居基準 原則要介護3以上 要支援2~要介護5

認知症の診断

事業所の所在地に住民票がある

自立・要支援1~要介護5
入居までの期間 長い(地域によって異なる) 短い 短い
利用料

(1割負担の場合)

入居金:0円

月額利用料:8~15万円

入居金:0~百万円

月額利用料:15~30万円

入居金:0~数千万円

月額利用料:15~40万円

居室 個室/4人部屋 個室 個室

これらの老人ホームは、利用期間は設けられていないため、長期入院や医療的ケアが必要になった、集団生活ができないなどといった場合以外は利用を続けることができます。

ただし、老人ホームの入居にあたり、注意しなければならないことがあります。

それは、入居契約をする上で、親族や後見人といった第三者の身元保証人を求められるケースが多いということです。

身元保証人の主な役割は、利用料の連帯保証、老人ホーム利用中に体調を崩した場合の緊急連絡先、入院したときの手続、退居した場合の荷物の引き取りなどです。

老人ホーム側とすると、ご利用者の体調が悪くなった場合、誰にも相談することができないという状況は避けたいところです。

せっかく特別養護老人ホームの順番が回ってきても、身元保証人になる人がいない場合、順番が先送りになることも考えられます。

身元保証人になる人がいない場合は、後見人が、入居契約の支援をしたり、緊急連絡先になるなどの支援をすることが可能です。

終末期について

ここまで、子どものいない人が認知症になったときに、在宅や施設で生活するために必要なことを書いてきました。

最後は、終末期についてのことを書いてきます。

これまで、私の高齢者福祉の経験の中で、200人以上のご利用者が最期をお迎えになりました。

最期の迎え方は人の数ほどあります。

ここで、お伝えしたいのは、終末期にどのような医療行為を希望するかです。

高齢になり食べ物を飲み込む力が低下してくると、食べ物をうまく飲み込むことができず、誤嚥性肺炎を起こすことがあります。

一度低下した飲み込む力が元に戻ることは少なく、誤嚥性肺炎を繰り返す方もいます。

口から食べ物を摂ることができず、他に栄養を摂る手段がない場合は、命を維持することができません。

そこで、病院から胃ろうや鼻腔経管栄養などチューブで直接栄養を体内に流す方法を提示されることがあります。

そのときに自分で胃ろうなどを希望するか否か判断ができる状態であれば良いですが、ほとんどの場合は意思疎通が困難な状態になっています。

色々と難しい問題ではありますが、「自分らしい最期を迎えたい」ということであれば、自分の最期の時はどのようにしたいのか、情報を収集・整理した上で、判断ができるときに自分の意向を決めて、それを他の人に伝えておくことが必要だと思います。

尊厳死宣言書についてはこちら

 

まとめ

最後に、お伝えしたいことをまとめます。

①認知症になった時は、自分から支援を求めることは困難なので、普段から誰かとつながっていること大切。

②場合によっては、財産の管理は信頼できる方や機関に任せる。

③柔軟に介護サービスを利用する。

④老人ホームを利用する可能性があることを想定しておく。

⑤自分らしい最期を迎えるために、終末期の意向を他の人に伝えておく。

 

以上です。

 

最後までお読みいただいてありがとうございました。

当事務所では成年後見制度を利用した高齢者支援を行っています。

ご自宅への出張相談も無料で行っていますので、お気軽にご相談ください。

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