こんにちは。
スター行政書士事務所の山田です。
このブログでは、私がこれまで20年以上高齢者福祉に関わってきた経験と介護職員向けの研修でお話してきたことなどをお伝えしたいと思います。
このブログが、少しでも介護の現場で頑張る皆様のお役に立てれば幸いです。
今日は「スピーチロック」について。
スピーチロックとは、介護の現場で起きる言葉による行動制限です。
例えば、立ち上がろうとしている利用者さんに対して「立たないで!」と声をかけるような場合がスピーチロックに当たります。
高齢者虐待防止法では、虐待の類型、行為を定義しています。
その定義を見る限りでは、スピーチロックは虐待には該当しません。
しかし、介護事業所では、不適切なケアとして問題視されています。
なぜ、介護の現場ではこのスピーチロックが問題になるのでしょうか。
先ほどスピーチロックの例で、「立たないで!」という言葉を挙げました。
私も介護の現場で働いているときに、何度も口にした言葉です。
では、「立たないで!」という言葉を使わないで、他の言い方に言い換えれば問題は解決するのでしょうか。
例えば、
「立ち上がると危ないから、座っていてください。」
確かに、先ほどの「立たないで!」と比べると、やわらかい印象です。
しかし本当に大切なことは、言葉の言い換えではなく、
「ご利用者が何で立とうとしたのか?」
ということを理解しようとすることだと思います。
例えば、立ち上がろうとした理由が、自分が食べた後の食器を片付けようとしたのだったら、どうでしょう。
「立ち上がると危ないから、座っていてください。」
と言葉を変えたところで、利用者さんからしてみたら、自分のやりたいこと、自立(自律)した生活を送ることができない状況には変わりありません。
介護保険法1条の目的規定は「(要介護状態にある者が)尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう」と明記しています。
スピーチロックは、あくまでご利用者の「尊厳の保持」や「自立」を実現するための一つの「手段」であり、それ自体が「目的」ではありません。
したがって、自分たちの声掛けがスピーチロックに該当するか否かを検討することも必要だとは思いますが、本質的な事ではないように思います。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。