こんにちは。

スター行政書士事務所の山田です。

このブログでは、私がこれまで20年以上高齢者福祉に関わってきた経験と介護職員向けの研修でお話してきたことなどをお伝えしたいと思います。

このブログが、少しでも介護の現場で頑張る皆様のお役に立てれば幸いです。

今日は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」について。

 

2021年の介護報酬改定において、施設系サービスや居住系サービスでは看取りケアの実施にあたり、人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインに基づいて支援をすることが求められました。

今回は、人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインのポイントを書いていきます。

厚生労働省 第199回社会保障審議会介護給付費分科会資料より

ガイドラインの趣旨

人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインは、平成19年に「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」(平成27年に「人生の最終段階の決定プロセスに関するガイドライン」に名称変更)として策定され、平成30年に介護の現場での看取り介護にも対応できるよう今の内容に改定されました。

ガイドラインは、人生の最終段階を迎えた本人・家族等と医師をはじめとする医療・介護従事者が、最善の医療・ケアを作り上げるプロセスを示すものです。

そして、ガイドラインは¨本人¨の自己決定を尊重し、支援が行われることを基本的な考え方としています。

なぜプロセス(手順)を示しているか

人生の最終段階は、一人の人として生まれたことと同じくらい重要な場面です。

そのような重要な場面においては、一人(例えば家族や医師など)の恣意的な判断で医療・ケアの内容が決定されるのではなく、適切なプロセスを経ることで、ケアの内容が正しいものに近づけるのではないかということだと考えます。

人生の最終段階とは

本ガイドラインは、その名の通り、人生の最終段階の方を対象としています。

ガイドラインの中では、どの段階を人生の最終段階とするかは、「本人の状態を踏まえて医療・ケアチームの適切かつ妥当な判断とする」としています。

意思決定支援のプロセス

本人の意思が確認できる場合

まず、大切なのは、意思決定の主体は、¨本人¨であるということです。

決して、家族や医療・ケア関係者ではありません。

これを基本的な考え方として、本人が意思決定できる場合のプロセスは以下の通りです。

①医療従事者から適切な情報提供と説明を行う。

②本人と医療・ケアチームとの合意形成に向けた十分な話し合いを行う。

③時間の経過や心身の状態の変化等に応じて本人の意思は変化しうるため、家族等も含めて繰り返し話し合う。

④話し合った内容を記録する。

本人の意思が確認できない場合

しかし、終末期においては本人の意思が確認できない場合も少なくありません。

このような場合は、第三者が本人の代わりに意思決定をする必要があります。

まず、家族等が¨本人の意思を推定できる場合¨は、その推定意思を尊重することになります。

ここでは、¨本人の意思を推定できる場合¨であって、家族等の意向や希望ではありません。

家族は、本人に対して様々な想いがあると思います。

また、家族によっては、死生観、宗教的感情など色々な事情があると思います。

そのような家族の想い、事情は大切です。

しかし、本ガイドラインでは、家族等が¨本人の意思を推定できる場合¨ということがポイントです。

事前に、家族内で終末期に関する医療やケアについて話し合われていれば、その内容に沿って医療・ケアが提供されることと思いますが、家族が本人の意思を推定できない場合も多いと思います。

家族等が本人の意思を推定できない場合、本人にとって何が最善であるか家族等と十分話し合うことになります。

家族等がいない場合及び家族等が判断を医療・ケアチームに委ねる場合も、本人にとっての最善の方針をとることが求められます。

何が¨最善¨であるか、答えが明確でない以上、十分に話し合い合意形成することが重要だと思います。

まとめ

以上、人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインについて書いてきました。

私は、これまでケアマネジャーや成年後見人として、多くの人生の最終段階の人たちを見てきました。

そこでは、「本人の意思決定を尊重する」というよりも、本人抜きで家族と話し合い、支援内容を決めていたことが圧倒的に多かったです。

その結果、本人の望む人生の最期と違った結果となってしまったこともありました。

また、いくら家族であっても他人の人生の最期を決めるということは、精神的にとても大きな負担があったことと思います。

家族の中には「母の命のスイッチを私が握らされてしまった。」という家族もいました。

本ガイドラインに沿った取り組みがされることで、「人生の総仕上げは自分自身で決める」という考えが広く根ざし、一人ひとりの意向に沿った最期の迎え方ができることを期待します。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。