こんにちは。

スター行政書士事務所の山田です。

このブログでは、私がこれまで20年以上高齢者福祉に関わってきた経験と介護職員向けの研修でお話してきたことなどをお伝えしたいと思います。

 

このブログが、少しでも介護の現場で頑張る皆様のお役に立てれば幸いです。

 

今日は「寄り添うケア」について。

介護の仕事をしていると「寄り添うケア」「利用者さんに寄り添うことが大切」などと「寄り添う」という言葉を聞くことがあると思います。

この「寄り添う」という言葉、どのように捉えていますか。

先日、認知症介護実践者研修の中で、受講生の事業所の認知症ケアの課題を一緒に考えていました。

その受講生は、「家に帰りたい」というご利用者の事例で、

「利用者さんが『家に帰る』、と言った時には寄り添って対応をしています。」

「こちらが寄り添って対応しているのに、帰宅願望が治まらないんです。」

と話していました。

私が「具体的に¨寄り添う¨とはどのようなことをしているんですか。」と尋ねたところ、受講生さんは、「今はコロナウイルスの感染の危険があるから外出できないことを説明したり、それから安心できる声掛けをしたり...。」とのこと。

これを聞いて思ったのが、¨寄り添うケア¨というのは、介護者が¨寄り添っている¨、と判断するものではなく、利用者が¨寄り添ってくれている¨と感じるものではないかということ。

介護者にできることは、¨自分たちは寄り添ったケアをしている¨と決めることではなく、¨相手の不安や困りごとを解決するためには何が必要か¨を考えることではないかと思います。

先ほどの受講生。

もう少しお話を聞いていくと、「『家に帰りたい』という言動は、仲の良い娘さんがコロナウイルスの影響で面会に来られなくなったあたりから出てきた。」とのこと。

もしかすると、その方の「家に帰りたい」というのは、「娘に会えなくて寂しい」という意思表示なのかもしれません。

もしそうだとしたら、家に帰れないことを説明したり、安心できる声掛け(実際にどのような声掛けかはわかりません)をしても、利用者さんは、自分の気持ちを分かってくれない、自分の困っていることを解決してくれないと感じてしまうのではないでしょうか。

もし、娘さんと会えないで寂しい思いをしているのなら、安心できる声掛けだけではなく、娘さんと電話で話をしてもらう、カメラ付きの電話で話をしてもらう、手紙を書いてもらう、写真を送ってもらう、など支援内容が変わってくると思います。

 

介護者が¨寄り添っている¨と判断することにより、自分たちはこれだけ寄り添っているのに、利用者さんは分かってくれない(変わってくれない)と、介護者が疲弊してしまうこともあるかもしれません。

 

¨寄り添うケア¨という言葉は耳障りの良い言葉です。

しかし、その意味をよく考えないと、ご利用者にとっては、あまり意味のないケアになってしまうのかもしれません。

 

以上、最後までお読みいただきありがとうございました。