レビー小体型認知症の主な症状に幻視があります。
幻視は、実際にないものが本人にははっきりとみえる症状です。
これまで関わってきたレビー小体型認知症の方の幻視と私がどのように関わったかを書いていきます。
「レビー小体型認知症の対応はこの対応方法が正解です。」
といったものではありませんが、何かお役に立てれば幸いです。
Aさんの場合
Aさんは、特別養護老人ホームに入居している男性です。
長年、自衛隊員として仕事をしていました。
自宅で生活をしているときに実際にないものが見えるようになり、レビー小体型認知症と診断されました。
その後、在宅生活が難しくなったため、特別養護老人ホームに入居しました。
特別養護老人ホームに入居した後も幻視の症状は強く、自衛隊で仕事をしていた影響でしょうか、幻視の中に出てくる多くは銃を持っている北朝鮮の兵士でした。
そのような幻視が出てきたときは、普段、おとなしいAさんとは別の人のように、顔を真っ赤にして幻視に向かって大声を出したり、銃を構える体制をしたり、時には、食堂の椅子やテーブルをひっくり返すこともありました。
このようなAさんの言動があったときは、誰もいないホールなどに場所を変え、椅子に座って話を聞くようにしました。
もしかしたら食堂の観葉植物や椅子に掛けてあった洋服が北朝鮮の兵士になって見えていたのかもしれません。
場所を変えてお話を聞くうちに徐々に落ち着くことが多かったです。
場所を変えてお話を聞きながら「Aさんには北朝鮮の兵士が見えているかもしませんが、自分には見えません。」と本人が見えていることは否定せず、自分には見えない、ということを伝えていました。
レビー小体型認知症の方は、病識があることが多いとされています。
Aさんの場合も、「他の人には見えないものが自分には見えている」という自覚がありましたので、「自分は頭の病気でいない変になってしまったんだ。」というような話をすることがありました。
Bさんの場合
Bさんは、自宅で一人暮らしをしている女性です。
私は保佐人としてご支援しています。
1年6か月前にレビー小体型認知症と診断されました。
Bさんは、元々芸能関係の会社で仕事をしていた方。
この方の場合も過去の経験が幻視に影響しているのかもしれません。
「家の中に、もう死んだはずの著名人がいる。」とよく話していました。
レビー小体型認知症の主な症状として、幻視の他に変動性の認知機能障害があります。
1日のうちでよい状態の時と、認知機能が低下し混乱する時があります。
Bさんは、認知機能の低下と幻視で不安になったときに、私のところに電話をしてきます。
私は、先ほど書いたAさんのときと同じように、「Bさんには見えているかもしれないけど、他の人には見えない人です。実際はいない人たちだから大丈夫ですよ。」とお伝えすると、「それは正論でよく分かっています。でも私には見えてしまっていて怖くて仕方がない。すがるような気持ちで電話しているんです。」と言われたことがありました。
電話でBさんにそのように言われ、長谷川式スケールの長谷川和夫医師が言っていたことを思い出しました。
長谷川先生は、「認知症ケアは、認知症でない人が認知症の人に対して『こっち側へ来てください。』というものではなく、認知症の人の世界に行くこと。」というようなことを言っていたように思います。
「認知症」ではなく、「人」を理解する。
パーソンセンタードケアの考え方です。
頭ではわかっているけど、実践できていない。
まだまだ学ぶことばかりだと反省ばかりです。