スター行政書士事務所の山田です。
私は、約19年間、社会福祉法人で仕事をしてきて、現在も、福祉事業所の方々や後見人としてご高齢者と関わっています。
このブログは、これまでの福祉に関わってきた経験から考えていることを書いていきます。
少しでも福祉の現場で働いている皆様のお役に立てれば幸いです。
今回は「職員研修の大切さ」について。
介護事業所では、認知症研修や虐待防止研修、感染症防止研修など、決められている研修を実施しなければなりません。
しかしこの研修、日常的に人材不足の介護事業所にとっては、かなり、負担が大きい。
日常業務に追われて、職員研修を疎かにしてしまう事業所も多いのではないでしょうか。
この記事では、実際に、私が経験した中で、なぜ、研修や学ぶ機会を提供することが大切かを書いてみたいと思います。
私がユニット型特別養護老人ホームの生活相談員をやっていた時の話。
そこに福祉関係の専門学校を卒業したばかりの若い新人職員が入職しました。
入職して1~2カ月経った頃、その職員からこんなお話が。
「山田さん、老人ホームって動物園みたいですね。」
この発言を聞いた時、ちょっとびっくりしましたが、この職員は、突然大きな声を出す利用者さんや、話しかけても言葉が通じない利用者さんを見て、このように発言したようです。
そこの特養の法人理念は、「人権を尊重します」。
利用者さんを動物と同視してしまっていることには法人的にも問題です。
この法人は、積極的に職員を外部研修に参加させたり、外部の講師を招いて全職員を対象にした研修を行ったりしていました。
例えば、弁護士を招いて人権についての内部研修を行ったり、時間も費用もかかる認知症実践者研修やリーダー研修などに参加してもらったりしていました。
その職員も、人権や認知症ケアについて学びました。
そこで、人権とは何か、認知症の人が声を出すには何か理由があるのではないか、言葉が通じないのは失語などの認知症の中核症状によるものではないか、ということを学び、考えるようになったと思います。
その結果は?
最初に書いたように、ご利用者が動物に見えていた職員。
それから5~6年経ちユニットリーダーになるまでに成長しました。
そして、大勢の福祉関係の学生を前にして、先輩として話をする機会が回ってきました。
そこで、その職員はこれまでのご利用者との関わりを、涙を流しながら話していました。
後で聞いたら「話している途中で利用者さんの顔が浮かんでしまって、思わず泣いてしまった。」との事。
きっと、聞いていた学生は、高齢者福祉の現場で活躍する、とてもすばらしい先輩の姿が見られたのではないかと思います。
最後に
もし、事業所で人権や認知症について学ぶ機会がなかったら、その職員はもしかしたら最初に見えていた状況=ご利用者を動物として捉える、から変わっていなかったかもしれません。
当然、その職員の学ぶ姿勢や色々なことを吸収できる人間性もあったかと思いますが、事業所が積極的に研修の機会を提供したこと、利用者を動物として見てはいけないという雰囲気があったことも大きいと思います。
忙しい現場だからこそ、時間をとって学ぶことが大切。
事業所全体が悪い方向へ流れていってしまわないように。