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【介護事故】介護事業所の記録の重要性

介護保険制度は、厚生省令で各事業所における介護計画(施設サービス計画)、提供した具体的なサービス内容等の記録、苦情の内容等の記録、事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録など様々な記録を整備することがの記録が求められています。

介護事業所の記録は、ご利用者の日々の状態の変化を把握し、適切なサービスを提供していくために必要でありますが、この記事では、介護事故が起きた時の記録の重要性について考えてみたいと思います。

記録によってご利用者やご家族とのトラブルを未然に防止することがあります。

昨今、高齢者虐待に関する報道を目にすることが多くなりました。

介護サービス利用中の状況が分からないご家族にとっては、介護事故が起きた場合に何か不適切なケアが行われたのではないか、と不信感を持つ場合もあるかもしれませn。

介護事故が起きた後にご家族に事故の連絡するときには、職員の記憶ではなく記録によって説明することが求められます。

そして、記録をする上では、事実と解釈とを分けて記載することが必要です。

例えば、「歩行不安定」(解釈)ではなく「居室からリビングまでは手すり等に摑まれば歩行可能」(事実)と書いたほうが、良いでしょう。

なぜなら、「歩行不安定」では、人によって認識が異なるからです。

この小さな認識のズレが徐々に不信感になり、大きなトラブルになることがあります。

特に入居系サービスで普段のご利用者の状態を知らないご家族にとっては、できるだけ伝わりやすく記録することが重要になります。

介護事故が起きた場合、記録に基づき事実や今後の対応策を家族に報告することは大切ですが、納得が得られない場合、裁判になってしまうことがあるかもしれません。

ここで、記録の重要性を考えさせられる裁判例を見てみましょう。

【判決日】

平成28年8月23日/東京地方裁判所/平成27年(ワ)第19572号

【事例】

平成26年2月25日、原告A氏(男性・87歳)は、被告法人との間で有料老人ホームの利用契約を締結しました。

A氏は、同年5月12日リビングで昼食を済ませ、その後も他の利用者と雑談等していました。

事故発生時、フロアには2名の職員がいましたが、他の利用者を居室へ誘導していました。

リビングからドンと音がしたことからリビングに向かったところ、A氏が床に倒れている状態でした。A氏は、職員に対し、「トイレに行こうとして立ち上がったところ、足を滑らせ転倒した。」と述べました。その後、A氏は病院へ搬送され、左大腿骨転子部骨折のため入院することになりました。

 

この有料老人ホームは、おおよそ1か月ごとに居室担当者が入居者本人の様子を観察して、担当ケアマネージャーにアセスメント兼モニタリング実践記録表を提出していました。

そして、入居後3回の報告がなされ、いずれも日常生活動作(移動、移乗、食事、排泄、上着及び下着の着脱共に「自立」とありました。

1回目の報告には、失禁した衣類を引出にしまってしまうことがあること、2回目、3回目の報告には、帰宅願望があるので、所在確認や気持ちがまぎれるようにレクリエーション参加をするよう対応、といった内容でした。

このような事実関係を認定した上で裁判所は、「本件施設職員による観察及びその分析、情報共有の結果によるも、原告の問題性としては失禁時の対応や帰宅願望への対応が中心であり、歩行能力について格別具体的な問題は観察されず、本件契約締結後、本件施設において原告が転倒したことはないほか、入所オリエンテーション時及びその後の連絡や面会の機会において、原告の家族からは転倒に対する具体的な不安は聞かれていない。

また、本件事故が発生したのは、Aさんの帰宅願望が高まり、施設内を徘徊していたなどの機械ではなく、昼食後、他の入居者と雑談をして比較的落ち着いて過ごしていた時間帯に、職員が他の介助が必要な利用者を居室に送り届けていた際に、原告がトイレに移動しようとして発生したものである。

として、職員において転倒事故を具体的に予見することは困難であり、原告の損害賠償請求には理由がないとして棄却しました。

また、この事例では、訪問医が作成した診療情報提供書の中に「転倒に注意してください。」との記載がありましたが、裁判所は具体性がない、としています。

 

私は、この裁判で居室担当の職員が毎月1回モニタリングを記録として残していたことが影響しているのではないかと考えます。

裁判所は、このモニタリングの結果を重視して、転倒事故の予見可能性はなかったとしています。

仮に、このような記録が証拠として残っていなければ、結果は変わってきたのではないかと思います。

今回の裁判では、医師が作成した診療情報提供書より、介護職員のモニタリングの結果を重視しています。

介護事業所の職員が作成する記録の重要性はご理解いただけたのではないでしょうか。

以上、介護事故における記録の重要性について書いてきました。

 

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プロフィール

  
スター行政書士事務所 山田拓郎
【事業所理念】一人ひとりが輝ける社会の実現を目指します

福祉事業所設立支援/後見業務/研修事業

神奈川県相模原市

行政書士/介護福祉士/ケアマネージャー/認知症介護指導者(認知症介護研究・研修東京センター)/上級リスクマネージャー/パーソン・センタード・ケアと認知症ケアマッピング基礎コース研修修了

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