ソーシャルビジネスは個人や任意団体(法人格のない団体。団体として活動をしていても、権利義務の帰属主体となることができないため、構成員個人の名前で契約をしたり、財産を所有したりすることになります。)でも行うことができます。

しかし、個人や任意団体より法人の方が社会的信用度は高いと考えられます。

法人格を取得することにより、事務所の賃貸や物品の購入は法人名義で契約することができますし、銀行口座も法人名で開設することができます。

また、公共団体の補助金の申請をする場合、法人格を要件としている場合がほとんどです。

では、ソーシャルビジネスを始める際、どのような法人を選択すればよいのでしょうか。

それぞれの法人によって特徴があります。

起業するときに、なるべく費用を抑えたい、手間をかけたくないといった理由で安易に法人格を選択してしまうと、事業開始後に法人格を変更しなければならずかえって煩雑な手続きをしなければなりません。

また、法人格を変更することができない場合もあります。

事業開始後は、選択した法人格の性質に沿った運営が求められるので、法人設立の時には、それぞれの特徴を理解し選択することが必要です。

ここでは、ソーシャルビジネスを起業するために法人格取得について書いていきます。

 

営利法人・非営利法人とは

法人は大きく分けて営利法人と非営利法人に分けることができます。

まずは営利法人と非営利法人とは何かについてみていきましょう。

 

営利法人

営利法人は、事業で得た利益を構成員(株主など)に分配されることが予定されている法人をいいます。

主な営利法人は株式会社や合同会社(LLC)が挙げられます。

 

非営利法人

非営利法人は、利益を構成員に分配することが禁止されている法人です。

なお、よく誤解されることがありますが「非営利」とは、利益を得てはいけないといった意味ではありません。

事業で得た利益は、構成員に分配することができない、ということです。

運営するために、得た利益の中から職員に給料を支払ったり、物品を購入することは問題ありません。

主な非営利法人には、特定非営利活動法人(NPO法人)や社団法人・財団法人、社会福祉法人などがあります。

 

法人の比較

下の図は法人格による特性を比較したものです。

営利法人 非営利法人
株式会社 合同会社 NPO法人 一般社団法人 社会福祉法人
目的・

事業内容

問わず 問わず 公益の推進

20の特定非営利活動事業

問わず 社会福祉事業
資本金・

基金

1円以上 1円以上 不要 不要 不要
設立費用

自分で手続した場合

登録免許税等で

最低24万円以上

登録免許税で

最低6万円以上

0円 登録免許税等で

約11万2千円

0円
設立時

必要人数

株主1人以上 社員(出資者)1人以上 社員(会員)10人以上 社員2人以上 理事6人以上

監事2人以上

理事の2倍超の評議員

設立期間 1か月以内 1か月以内 5か月程度 1か月以内 2年程度
主な資金調達手段 株式発行、借入金、社債 株式発行、借入金、社債 会費、借入金、疑似私募債、寄付 借入金、寄付 借入金、寄付
税金の優遇 なし なし あり 非営利型法人の場合 あり あり
監督所轄庁 なし なし 所轄庁の監督あり なし 所轄庁の監督あり

 

営利法人の特性

株式会社

株式会社は、株式制度により資金調達の手段が多様であると共に、事業の収益にを出資者(株主)に配分することが認められています。

上図にあるように1名で設立することができるため、迅速な意思決定ができることが特徴です。

しかし、非営利法人が利用できる税制上の優遇措置や自治体が非営利法人向けに提供しているサービスを受けることできません。

 

合同会社(LLC)

合同会社は、出資者(社員)が役員を兼ねていますので、スムーズな意思決定ができます。

株式会社のように、経営に参画しない人から出資金を得ることはできないため、大規模な事業展開には向いていません。

 

非営利法人の特性

NPO法人

NPO法人は、活動に対して市民の協力が得られるような制度設計となっています。

NPO法人が、どのような活動を行おうとしているのか、設立時には定款や役員名簿、設立趣意書、事業計画書、活動予算書を、決算では、事業報告書、活動計算を提出し、一定期間市民が閲覧できるようにしています。

 

一般社団法人・一般財団法人

一般社団法人・一般財団法人は、所轄庁による認証の必要がなく、法人の設立には登記のみで可能となります。

また、事業計画書などの作成や縦覧といった手続きが不要であるため、法人格を取得するには、スピーディであるといえます。

しかし、税務面での取り扱いは、株式会社とほとんど変わりがなくメリットはないと言えるでしょう。

 

以上、法人格の違いについてみてきました。

 

最初にも書いたように、事業を開始してから

「選択した法人が自分が求めていた法人と違った」

などということがないように、それぞれの特徴を理解した上で、法人格を選択することが必要です。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。