厚生労働省は、2019年11月、「社会福祉法人の事業展開等に関する検討会(第6回)」において、報告書(案)を示しました。

これまでの社会福祉法人の連携は、社会福祉協議会や法人間の自主的な協働という「弱い繋がり」と、他法人と合併・事業譲渡という「強い繋がり」しかありませんでした。

社会福祉連携推進法人は、その中間的な選択肢に位置付けられます。

報告書では、今後益々高まる地域の福祉ニーズに対応するため、社会福祉法人や社会福祉事業者が、地域に福祉サービスの質を維持・向上することが必要であるとしています。

連携法人の仕組みは、以下の通りです。

法人格

一般社団法人のうち「社会福祉に係る業務の連携を推進するための方針」の策定等、一定の基準に適合すると認めるものを、所轄庁(都道府県知事など)が認定します。

業務

連携の推進を図ることを目的として、以下の①~⑤の業務を対象としています。

①地域共生社会の実現に向けた連携

②災害対応に係る連携

③福祉人材確保・育成

④本部事務の集約や生産性向上のための共同購入など、社会福祉事業の経営に関する支援

⑤社会福祉法人への貸付等

①~⑤の業務に支障を及ぼす恐れがない範囲であれば、それ以外の業務を実施することも可能です。

なお、社会福祉連携推進法人自体が社会福祉事業を行うことはできません。

連携法人に参加できる社員

ここでいう「社員」とは、総会で議決権を持つ者のことです。

一般的に使われているような「従業員」「職員」といった意味ではありません。

社会福祉連携推進法人の社員は、社会福祉法人を始めとする社会福祉事業を行う事業者の他、社会福祉従事者の養成施設、連携業務に関する業務を行う者と認めることが適当である、としています。

社員は、社会福祉事業を実施している法人を2以上とし、そのうち社会福祉法人が1以上であることが必須になります。

活動区域

社会福祉連携推進法人の活動区域は、自治体に関わらず、自主的な判断で決めることができます。

経費

社員からの会費、業務委託費で運営します。

議決権

原則として社員は、各一個の議決権を有します。

一定の要件のもと、定款で別段の定めをすることができます。

また、社会福祉法人を中核とした連携・協働化の選択肢であるという観点を踏まえ、議決権の過半数は社会福祉法人が有することが適当であるとしています。

貸付業務を行う場合の取扱い

  • 貸付を受ける社会福祉法人毎に、当該法人への貸付の内容を所轄庁が認定する仕組みとすること
  • 貸付の原資として、貸付対象ではない社員である社会福祉法人から社会福祉連携推進法人への貸付を認めること

認める貸付の限度額は、連携法人の貸付が当該社会福祉法人の拠点において運営に影響を与えないようにするため、拠点から法人本部に繰り入れが可能な範囲で認めること

地域の意見の反映

社会福祉連携推進法人が活動区域の地域住民の意向を十分に反映し、地域の福祉サービスの維持・向上を資する存在となるよう、福祉サービスを受ける立場にある者や、社会福祉に関する団体、地域の福祉の実情を知る専門家(社会福祉士等)の地域関係者からなる評議会を設置すること、としています。

評議会は、上記地域関係者の意見を集約し、社員総会・理事会に意見を具申します。

社員総会、理事会はその意見を尊重しなければなりません。

その他

〇代表理事の選任は、所轄庁(都道府県知事等)などの認可が必要。

〇社会福祉連携推進法人の合併は認めない。

〇次に掲げる項目等法人のガバナンスについては社会福祉法人と同様とすること。

  • 理事会・理事・監事・会計監査人の機関の設置
  • 定款を変更する場合は所轄庁の認可が必要
  • 財務諸表等の閲覧・公表義務
  • 解散・精算の手続
  • 残余財産の帰属先

以上、社会福祉法人の事業展開等に関する検討会報告書(案)を見てきました。

社会福祉法人は、今後益々、社会福祉事業の主たる担い手として地域の福祉ニーズに応えられことや経営力が求められることになります。

また、人材の確保や育成をいった喫緊の課題をどのようにして解決していくのか。

そのために、社会福祉連携推進法人という新たな制度を利用することも必要かもしれません。