目次
社会福祉法人とは
社会福祉法人とは
「社会福祉事業を行うことを目的として、この法律にの定めるところにより設立された法人をいう。」
と定義されています(社会福祉法22条)。
ここでいう「社会福祉事業」には、第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業があります。
第一種福祉事業
第一種社会福祉事業の経営主体は、原則的に国・地方自治体・社会福祉法人になります。
その理由を、厚生労働省の通達(S26.6.4発社第五六号)では、「個人の人格に影響するところ大であり、弊害を伴い易いおそれが多いからである。」
としています。
第一種社会福祉事業は、入所施設が多くなっています。
入所施設は、社会的に支援が必要な人が常に生活をしているため、その運営次第では人権侵害を引き起こす可能性があります。
そのため、社会的に信用を得ている地方公共団体や社会福祉法人が経営することを原則としました。
生活保護事業
- 救護施設
- 更生施設
- その他生計困難者を無料または低額な料金で入所させて生活の扶助を行うことを目的とする施設
- 生計困難者に対して助葬を行う事業
児童福祉事業
- 乳児院
- 母子生活支援施設
- 児童養護施設
- 知的障害児施設
- 知的障害児通園施設
- 盲ろうあ児施設
- 肢体不自由児施設
- 重症心身障害児施設
- 情緒障害児短期治療施設
- 児童自立支援施設
老人福祉事業
- 養護老人ホーム
- 特別養護老人ホーム
- 経費老人ホーム
身体障害者福祉事業
- 身体障害者更生施設
- 身体障害者療護施設
- 身体障害者福祉ホーム
- 身体障害者授産施設
知的障害者福祉事業
- 知的障害者更生施設
- 知的障害者授産施設
- 知的障害者福祉ホーム
- 知的障害者通勤寮
婦人保護事業
- 婦人保護施設
経済保護事業
- 授産施設
- 生計困難者に対して無利子または低利で資金を融通する事業
共同募金事業
- 共同募金会が行う事業
第二種社会福祉事業
第二種社会福祉事業には、経営主体の制限はありません。
そのため、地方公共団体や社会福祉法人だけではなく、株式会社なども経営することが可能です。
(児童福祉法や老人福祉法などの個別法で別途経営主体が決められている場合があります。)
生活保護事業
- 生計困難者に対して、その住居で衣食その他日常の生活必需品若しくはこれに要する金銭を与え、又は生活に関する相談に応ずる事業
児童福祉事業
- 障害児通所支援事業
- 障害児相談支援事業
- 児童自立生活援助事業
- 放課後児童健全育成事業
- 子育て短期支援事業
- 乳児家庭全戸訪問事業
- 保育所
- 児童厚生施設 など
老人福祉法上
- 老人居宅介護等事業
- 老人デイサービス事業
- 老人短期入所事業
- 認知症対応型共同生活援助事業など
障害者総合支援法
- 障害福祉サービス事業
- 一般相談支援事業
- 特定相談支援事業など
身体障害者福祉法
- 身体障害者生活訓練等事業
- 手話通訳事業
- 介助犬訓練事業
- 聴導犬訓練事業など
知的障害者福祉法
- 知的障害者の更生相談に応ずる事業
生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を利用させる事業
生計困難者のために、無料又は低額な料金で診療を行う事業
公益法人たる社会福祉法人
法人には、大きく分けて営利法人と非営利法人があります。
代表的な営利法人は、株式会社です。
営利法人は、営利を目的とする法人で構成員(株主)の私益を目的としている法人です。
非営利法人には、NPO法人、社団・財団法人、宗教法人などがあります。
社会福祉法人もこの非営利法人に含まれます。
そして、社会福祉法人は、公益を目的とした法人なので、公益法人に当たります。
社会福祉法人を設立するためには、都道府県知事など所轄庁の許可を得なければなりません。
また、設立や運営を行う上で、多くの規制が定められています。
社会福祉法人の経営
社会福祉法人は、
「社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため、自主的にその基盤の強化を図るとともに、その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性を図らなければならない。」
とされています(社会福祉法24条)。
現在、社会福祉サービスを提供する団体は、株式会社やNPO法人、医療法人などがありますが、法律上このような規定があるのでは、社会福祉法人のみです。
社会福祉法人が、福祉サービスの中心的な役割を担っていることの表れだと考えられます。
特別養護老人ホームや児童養護施設などの社会福祉サービスを利用する人の、生活・尊厳を守るためには、安定した経済的基盤が必要です。
そのため、社会福祉法の25条では、
「社会福祉法人は、社会福祉事業を行うに必要な資産を備えなければならない。」
と明記しています。
社会福祉法人は、社会福祉事業に支障がない限り、公益事業又は収益事業を行うことができます(社会福祉法26条1項)。
公益事業とは、社会福祉と関係のある公益を目的とする事業のことをいいます。
例:有料老人ホームなどがあります。
収益事業とは、その収益を社会福祉事業または公益事業にあてることを目的とする事業のことをいいます。
例:社会福祉法人の所有する不動産を活用して行う貸ビル、駐車場の経営があります。
これからの社会福祉法人
社会福祉法人は、法律に定められて約60年が経ちます。
社会福祉法人は、これまで多くの利用者の生活を支援し、地域の中で社会福祉を支えてきたといえるでしょう。
しかし、以前の措置制度の中では、行政が福祉サービスの内容を決定し、事業者を特定していました。
そのため、社会福祉サービスを提供する側が、積極的に質の高いサービスを提供するという気風は生まれにくなったと思います。
しかし、今日では、高齢者、障害者、保育サービスは措置制度から契約へと変わりました。
つまり、利用者は行政から決められるのではなく、自らの意思でサービスを選ぶようになりました。
今後、サービスを利用する世代は、戦前生まれの高齢よりも価値観が多様化していることと思います。
社会福祉法人には、利用者の多様化するニーズにこれまで以上に応えていくことが期待されます。