以前、特別養護老人ホームの職員さんから「私が働いている施設では、ご利用者の散歩は家族にお願いをしていて、職員は一切やりません」とお話を聞きました。

その施設では、排せつ介助、食事介助、入浴介助、配薬介助などの生活を送る上で必要な身体的な介護は職員、それ以外の散歩や買い物などの余暇活動は家族が対応しているとのことです。

この施設がどのような経緯でそのような方針を決めたのかはわかりません。

しかし、私の経験上、特別養護老人ホームに入居している家族の面会頻度は、月に2~3回の人が多いように思います。

家族によっては、何年も面会に来ない人もいます。

散歩を家族対応とした場合、このような方は、何年も建物の外に出ることができません。

私は、介護サービスの本質的な価値は、排せつ介助、食事介助、入浴介助だけではないと思います。

もちろん、食事、排せつ、入浴介助は3代介護とも言われ、ご利用者が生活を営む上でとても大切な支援です。

その支援方法について、知識、技術を学び、実践することは介護サービスの大切な役割だと思います。

しかし、例えば、車を購入するときは、車の購入自体が目的ではなく、

「快適に目的地まで行きたい」

「早く目的地まで行きたい」

などといった目的があります。

また、美容院で散髪するときも、髪を切ることを通して

「さっぱりしたい」「かっこいい髪形にしてモテたい」

などといった目的があるのではないでしょうか。

介護サービスもそれと同じ。

私は、介護サービスの価値は、

「一人ひとりのご利用者が幸せな状態を作ること」

だと思います。

何年も外に行くことができないのは、幸せな状態ではありません。

一人ひとりのご利用者が幸せになるための支援をすること。

それが介護の仕事の価値を高めることだと思います。

そして、介護サービスを通してご利用者だけではなく、サービスを提供する側も幸せになることが介護サービスの魅力だと考えます。