現在、相模原の障害者施設津久井やまゆり園で起こった事件の裁判が行われています。
やまゆり園事件は、障害者施設で起こったものですが、高齢者施設においても考えるべきことがあるのではないかと思い、書いてみます。
2月8日の朝日新聞は「被告の鑑定医によると、同僚らの『(被告は障害者に対して)分け隔てなく接していた』との証言などから、被告が園で働き始めた当初は障害者への偏見はなかったとみられる。…被告が医師に説明したところでは、利用者に暴力をふるう同僚がおり、先輩に『暴力はいけない』と相談したが、『最初はそう思うよね』などと言われた。」と報道しています。
その他にも、利用者からお礼を言われなかった、ほとんど面会に来ない家族がいたなどといった施設での経験と、本人の共感性に欠けた人格が結びついて偏見が生まれたとしています。
この記事の中で津久井やまゆり園の園長は「職員の暴力は把握していない」と話しているため、実際に暴力があったかは分かりません。
施設のルールに慣れてしまう
これまで、20年近く高齢者福祉施設で働いてきて、勤務の経験によって考え方が変わってしまうことは分からないでもありません。
私自身も似たような経験をしたことがあります。
介護福祉士の実習で行った施設では、車いすに乗っている認知症の人は、自分で立ち上がれないようにY字型ベルトを着けられたり、頭は寝ぐせ、服は食べ物で汚れたままという状況でした。
そのような老人ホームの状況を見た時に「エッ?老人ホームってこんななの?」と『違和感』を抱きました。
それまで自分が経験してきた一般社会の常識と老人ホームの常識のギャップに疑問を感じたのだと思います。
しかし、自分が特別養護老人ホームの介護職として仕事を始めると、いつの間にかそのような『違和感』はなくなり、実習先の老人ホームと同じようなことをしていました。
最初の感性を大切に
介護の仕事の中で、食事介助や排せつ介助の技術は、経験を重ねるごとに上達します。
しかし、最初に「アレ?おかしいな。」という感覚は、経験が長くなるにつれ、どんどん鈍くなってしまうように思います。
「初心忘れべからず」と言いますが、福祉の分野では、最初に感じた違和感や疑問に感じたことを忘れてはいけないのだと思います。