「考えるな、感じろ」

これはブルース・リーの言葉です。

ブルース・リーがどのようなことを考えて、この言葉を使ったのかはわかりませんが、

介護の現場でもこの言葉はとても意味のある言葉だと思ってこの記事に書いてみます。

私が、福祉の仕事を始めたのは、1999年、介護保険制度が始まる前です。

その時は行政が利用者の福祉サービスを決める「措置」と言われる制度で福祉サービスは行われていました。

それが2000年の介護保険の導入によって、大きく変わります。

福祉サービスの利用は、ご利用者と事業者の契約に変わりました。

そこで、介護事業者は「契約責任」を考えるようになりました。

つまり、サービス利用中に事故が起きた場合、事業者は利用者や家族に責任(損害賠償責任)を問われるのではないか、責任を負わないためにできるだけ事故のリスクを取らないようにしよう。

このような考え方です。

確かに、介護サービスを利用するのは、高齢者ばかり。

一度、転倒や誤嚥を起こした場合、その後、車いすやベッド上での生活になったり、肺炎を起こして死亡する危険性すらあります。

そのために、事故を未然に防止することは、事業所として当然の責務です。

しかし、あまりに転倒や誤嚥などの事故を恐れすぎて、利用者の希望や職員のやりがいが蔑ろにされていないか、という危機感があります。

事故防止のために利用者の自由を奪う、誤嚥性肺炎防止のために、利用者の希望を聞かずに一方的にミキサー職に変更する。

これでは、福祉サービスの基本理念である、個人の尊厳の保持や自立支援(社会福祉法3条、介護保険法1条)から考えて、本末転倒といえます。

支援する人もこのような対応を続けていると、仕事に対してやりがいがなくなったり、自信が持てなくなる人多いのではないでしょうか。

先ほども書きましたが、事故対策を考えることは大切です。

しかし、考えすぎては、利用者にとって良いケアになっているとは言えないこともあります。

目の前のご利用者が一人の人として「何がしたいのか?」「何に困っているのか?」などをもっと「感じること」。

頭でっかちにならずその感覚を持ち続けることが大切だと思います。

そして、ご利用者の意向を家族も含めた支援者が共有し、合意を得るという手続きを丁寧に踏んで上でケアを実践すれば、もっと「利用者中心のケア」に近づくのではないかと思います。