こんにちは。
スター行政書士事務所の山田です。
このブログでは、私がこれまで20年以上高齢者福祉に関わってきた経験と介護職員向けの研修でお話してきたことなどをお伝えしたいと思います。
このブログが、少しでも介護の現場で頑張る皆様のお役に立てれば幸いです。
今日は「認知症ケア 観察のポイント」について。
介護の現場で観察は、ご利用者を観察することが大切だと教わり、仕事の中で日常的に行われていることと思います。
例えば、バイタル測定や食事摂取量、排せつ、睡眠状況など。
ご利用者を観察していることは沢山あると思います。
それに加えて、認知症ケアでは、他の人の居室に入らないか、食べられないものを口の中に入れてしまわないか、介助中に叩かないかなど、認知症ケア特有の視点で観察することも求められます。
これはリスクマネジメントの視点での観察と言えます。
しかし、認知症ケアの専門職としては、これだけでは足りません。
もっと、認知症の人の全体像を観察する力が必要になります。
認知症は脳の障害により、記憶障害や失語などの症状が出て、自分が考えていることや思っていることを相手に伝えにくくなるコミュニケーションの障害が出現します。
そこで、認知症の人の全体像の情報を理解しておくことが大切です。
例えばこんなことがありました。
グループホームに入居しているNさん(女性)は、夜間、職員がオムツ交換に入ると職員を叩く、引っ掻くといった行為があります。
職員同士で、¨どうすれば叩かれないで排せつ介助ができるか¨を考えていたとき、ある職員が、「Nさんは、若い時に旦那さんが亡くなって、それから長い間一人暮らしをしていたから夜に人が来るのは怖いのではないか?」と話しました。
他の職員からは、「そういえば、Nさんのご家族から、Nさんはとても用心深かった、と聞きました。」
女性職員からは「私はほとんど叩かれたりしたことがない」といった情報も。
そのような情報からは「Nさんは、夜寝ている時に自分の部屋に男性が入ってくるのが怖くて、男性職員に対して手が出てしまうのではないか。」といったことが推測されます。
そして、一人ひとりの介護職員が持っている情報を整理した結果、「夜にオムツ交換をするのは止めて、朝、ご本人が目を覚ましてからにしましょう。」ということが決まりました。
最初に、「どうすれば叩かれないでオムツ交換ができるか」を検討しようとしていたのとは大きなケアの違いです。
認知症の人の全体像をよく知り、想像力を働かせることで、ケアの方法は変わります。
また、コミュニケーションに障害が出ている認知症の人の思いに近づくことができるのではないかと思います。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。