2018年 共生型サービス開始

①障がいを持った人が65歳になっても、使い慣れた事業所においてサービスを利用しやすくする、②地域の実情に合わせて(特に中山間地域など)、限られた福祉人材の有効活用する、という観点から「共生型サービス」が介護保険、障害福祉に位置付けられました。

共生型サービスは、介護保険又は障害福祉のいずれかの指定を受けている事業所が、もう一方の制度の指定を受けやすくするというもので、「介護サービス」と「障害福祉サービス」を同一の事業所で一体的に提供できるというものです。

これから共生型サービスについて見ていきますが、その対象はホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイのことだと考えていただけると分かりやすいかと思います。

参考資料:厚生労働省「第153回社会保障審議会介護給付分科会」より抜粋

従来の福祉制度

一言で「福祉サービス」といっても、高齢者福祉サービスは介護保険法、障害者福祉サービスは障害者総合支援法という異なった法律の下で行われています。

介護保険サービスと障害福祉サービスの主な違いは以下のようになっています。

介護保険サービス 障害者福祉サービス
根拠法 介護保険法 障害者総合支援法
目的 この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。 この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)、知的障害者福祉法(昭和三十五年法律第三十七号)、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって、障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付、地域生活支援事業その他の支援を総合的に行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。
対象者 65歳以上の高齢者(特定疾患については40歳以上) 18歳以上の法律に規定する障害者・難病者、18歳未満の障害児
サービスの種類 居宅サービス(訪問介護、通所介護、訪問看護など)、施設サービス(特別養護老人ホーム、老人保健施設など)、地域密着サービス(認知症対応型グループホーム、小規模多機能型居宅介護など) 自立支援給付(居宅介護、重度訪問介護、行動援護、自立訓練、就労移行支援、グループホームなど)、地域生活支援事業(相談支援、成年後見制度利用支援など)
認定区分 要支援1・2、要介護1~5 障害支援区分1~6
費用負担 1割負担(負担上限月額あり) 1割負担、ただし一定以上の所得者については2割、3割負担(負担上限月額あり)
サービス計画作成者 介護支援専門員 相談支援専門員

二本柳覚編著 仲川亮・安藤浩樹著 これならわかる共生型サービスP17より一部改変

このように、サービスの利用者が高齢者か障害者で制度が分かれており、法律の目的や利用できるサービスの種類、費用負担、人員基準など色々な違いあります。

そして、それぞれの法令に定められた基準を満たした上で、都道府県から指定を受けなければ事業所を始めることはできません。

利用者と事業所の関係

共生型サービスが始まる前は、障害者、高齢者が利用できる事業所は以下のようになっていました。

障害福祉事業所 介護保険事業所 課題
障害者が利用 △1

(例外扱い)

・障害福祉の給付対象となるか否かは、市町村が個別に判断。

・障害支援区分に関わらない同一の報酬設定となっているため、重度者の報酬が低い。加算もつかない。

高齢者が利用 △2

(例外扱い)

・介護保険の給付対象とするか否かは、市町村が個別に判断。また、介護保険の「基準該当」は、障害福祉事業所としての指定を受けているというだけでは給付対象とすることができず、障害福祉の「基準該当」とは異なる。

・障害者が65歳になって介護保険の被保険者となった際に、使い慣れた障害福祉事業を利用できなくなる。

厚生労働省「142回社会保険審議会介護給付費分科会」より抜粋

障害者がサービスを利用する場合

上の図のように、障害のある人は障害福祉サービスを利用するの原則です。

しかし、地域によっては、介護保険制度の定着に伴い、高齢者介護サービスの事業所の整備は進んでいるのに、障害福祉サービスが身近にない、障害のある人が施設まで通うのが困難である、といった課題があります。その対策として、介護事業所が障害者を受け入れてサービスを行った場合には、障害者総合支援法の給付を受けられるようにしました。

それが「基準該当サービス」と言われるものです(上の図△1)。

基準該当サービスという制度を使えば、65歳未満の障害者でも介護事業所を利用することができます。

ただ、基準該当サービスは、あくまでも特例的な扱いになっており、介護事業所の基準該当サービスを認めるか否かは市町村が判断します。

ですので、隣の市町村では介護事業所で65歳未満の障害者を受け入れることができても、自分の事業所がある市町村では認められていない、といったことも出てきます。

また、基準該当サービスは、障害の程度によって事業所に入る収入が変わらない単位設定となっています。通常は、区分別に報酬が分かれ、重度の障害者が利用した場合には、報酬が増えるという仕組みになっていますが、基準該当サービスの場合、障害が重くても軽くても同じ報酬になっています。さらに加算も算定できないことから、積極的に基準該当サービスを行おうとする事業所は少ないと思われます。

下の図は、2018年の基準該当生活介護と通常の生活介護の報酬の差です。(生活介護:デイサービス)

※厚生労働省「142回社会保障審議会介護給付費分科会」より

 

高齢者がサービスを利用する場合

次に高齢者がサービスを利用する場合は、介護保険事業所を利用するのが原則になります。

ここで問題となるのが、障害福祉サービス事業所を利用していた障害のある方が65歳になった時、継続して障害福祉サービスを利用できるかという場合です。

障害者総合支援法第7条には「自立支援給付は、当該障害の状態につき、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)の規定による介護給付、健康保険法(大正十一年法律第七十号)の規定による療養の給付その他の法令に基づく給付又は事業であって政令で定めるもののうち自立支援給付に相当するものを受け、又は利用することができるときは政令で定める限度において、当該政令で定める給付又は事業以外の給付であって国又は地方公共団体の負担において自立支援給付に相当するものが行われたときはその限度において、行わない。」という規定があります。

障害福祉サービスに相当するサービス(デイサービス・ホームヘルプサービス・ショートステイなど)が介護保険法にある場合は、介護保険サービスの利用が優先されることになるという、介護保険優先の原則を明記したものです。

介護保険は主に社会保険料で賄われる社会保険方式を採用しています。一方、障害者総合支援法は税金で調達される社会扶助方式(税方式)を採用しています。社会保険方式と社会扶助方式が重なり合う場面は保険を優先するのが原則だという考え方です。

したがって、共生型サービスが開始される前は、障害を持っている人が65歳になった場合、原則的に介護保険が優先され、使い慣れた障害福祉サービス事業所とは別の介護保険事業所に移らなければなりませんでした。

そこで共生型サービスでは、障害福祉事業所が介護保険事業所の指定を受けやすくし、障害を持った人が65歳になっても継続して事業所を利用できるようにしました。

反対に、介護保険事業所も障害福祉事業所の指定を受けやすくし、65歳未満の障害者が利用しやすくしました。

障害福祉事業所 介護保険事業所 改善事項
障害者が利用

(本来的な給付対象)

・事業所が指定を受ければ、障害福祉の本来的な給付対象

・報酬の見直し(給付の改善(障害支援区分に応じた報酬の設定等)

高齢者が利用

(本来的な給付対象)

・事業所が指定を受けなければ、介護保険の本来的な給付対象

 

まとめ

①福祉サービスは、高齢福祉や障害福祉の根拠となる法律が異なる。いわゆる「タテワリ」。

②これまで障害福祉サービスを利用していた障害者は、65歳になると障害福祉サービスと介護保険サービスが重複しているサービス(ホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイなど)を利用する場合は、介護保険サービスに移らなければならなかった。

③障害福祉事業所は介護保険事業所の指定を受けやすく、介護保険事業所は障害福祉事業所の指定を受けやすくすることで、65歳以上の障害者でも継続してサービスを利用することができるようになる。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

共生型サービスの対象サービスは

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