【2019年(令和元年)特定処遇改善加算】算定要件・対象職員・配分ルールについて

令和元年10月の介護報酬改定において、介護職員等特定処遇改善加算(以下:特定加算)が創設されることになりました。

それに伴い厚生労働省は、平成31年4月12日「介護職員等特定処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」及び「2019 年度介護報酬改定に関する Q&A(Vol.1)」を公表しました。

この記事では、お伝えする内容は以下の通りです。

①算定対象サービスと各サービス毎の加算率

②特定加算の算定要件

③対象職員

④配分のルール

 

特定加算の取得を考えている介護サービス事業所のお役に立てれば幸いです。

(緑色の部分は「2019年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」を抜粋したものです。)

 

算定対象サービスと各サービス毎の加算率

特定加算の算定対象サービスと加算率は以下の図になります。

特定加算でもこれまでの介護職員処遇改善加算と同様、訪問介護や訪問リハビリテーションなどは加算対象外になっています。

そして、特定加算は加算率の異なる「加算Ⅰ」と「加算Ⅱ」があります。

厚生労働省社会保障審議会介護給付費分科会 168回(H31.2.13)

では、加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)はどこが異なるのでしょうか。算定要件を見てみましょう。

 

算定要件

算定要件は、次の①~④になっています。

算定要件 加算(Ⅰ) 加算(Ⅱ)
①介護福祉士の配置要件

サービス提供体制強化加算の最も上位の区分(訪問介護にあっては特定事業所加算((Ⅰ)又は(Ⅱ)、特定施設入居者生活介護等にあってはサービス提供体制強化加算(Ⅰ)イ又は入居継続支援加算、介護老人福祉施設等にあってはサービス提供体制強化加算(Ⅰ)イ又は日常生活継続支援加算)を算定していること。

 

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②現行加算要件

現行加算(平成29年度の介護職員処遇改善加算)(Ⅰ)から(Ⅲ)までのいずれかを算定していること(特定加算と同時に現行加算にかかる処遇改善計画書の届出を行い、算定される場合を含む。)。

③職場環境等要件

平成 20 年 10 月から届出を要する日の属する月の前月までに実施した処遇改善(賃金改善を除く。)の内容を全ての職員に周知していること。この処遇改善については、複数の取組を行っていることとし、別紙1表3の「資質の向上」、「労働環境・処遇の改善」及び「その他」の区分ごとに1以上の取組を行うこと。

④見える化要件

特定加算に基づく取組について、ホームページへの掲載等により公表していること。
具体的には、介護サービスの情報公表制度を活用し、特定加算の取得状況を報告し、賃金以外の処遇改善に関する具体的な取組内容を記載すること。
当該制度における報告の対象となっていない場合等には、各事業者のホームページを活用する等、外部から見える形で公表すること。
なお、当該要件については 2020 年度より算定要件とすること。

上記のように特定加算(Ⅰ)と特定加算(Ⅱ)は、介護福祉士の配置要件を満たすか否かによって異なります。

 

上記②③④を満たせば特定加算(Ⅱ)は取得できることになりますので、勤続10年の介護福祉士がいない場合でも算定可能です。(Q&A問1)

 

職場環境等要件については、「資質の向上」、「労働環境・処遇の改善」及び「その他」の区分ごとに一以上の取組を行うことが必要になります。ただし、これまで介護職員処遇改善加算を算定するに当たって実施してきた取組をもってこの要件を満たす場合、介護職員等特定処遇改善加算の取扱いと同様、これまでの取組に加えて新たな取組を行うものまでを求めるものではありません。(Q&A問2)

別紙1表3

 

④見える化要件は、情報公表制度を活用せずに、事業所のホームページを活用し、介護職員等特定処遇改善加算の取得状況、 賃金改善以外の処遇改善に関する具体的な取組内容を公表することも可能です。(Q&A問3)

以上、加算率と特定加算の算定要件でした。

 

賃金改善の対象職員は?

次に特定加算の支給対象となる職員についてみてみましょう。

特定加算の支給は、次の①~③のグループが対象になります。

 

① 経験・技能のある介護職員
介護福祉士であって、経験・技能を有する介護職員と認められる者をいう。
具体的には、介護福祉士の資格を有するとともに、所属する法人等における勤続10年以上の介護職員を基本としつつ、他の法人における経験や、当該職員の業務や技能等を踏まえ、各事業所の裁量で設定することとする。

 

② 他の介護職員
経験・技能のある介護職員を除く介護職員をいう。

 

③その他の職種
介護職員以外の職員をいう。

 

「勤続10年の考え方」については、

●勤続年数を計算するにあたり、同一の法人のみだけではなく、他法人や医療機関等での経験等も通算する。

●すでに事業所内で設けられている能力評価や等級システムを活用するなど、10年以上の勤続年数を有しない者であっても業務や技能等を勘案して対象とする。

など、各事業所の裁量により柔軟に設定できる、としています。(Q&A問4)

 

事業所における配分の方法

支給対象となるグループが決まったら、次はグループ毎にどのように配分するかです。

次の①~③のルール内であれば、職員一人ひとりの賃金改善額を柔軟に設定することができます。

①「経験・技能のある介護職員」のうち1人以上は、賃金改善に要する費用の見込み額が月額平均8万円以上又は賃金改善後の賃金の見込額が年額440万円以上にしなければなりません。(加算額が少額である場合や職員全体の賃金水準が低い事業所などは例外あり)

月額8万円の処遇改善に現行の介護職員処遇改善加算を含めることはできません。(Q&A問6)

②「経験・技能のある介護職員」の処遇改善額は、「他の介護職員」の2倍以上であること。

③「他の介護職員」の処遇改善額は、「その他の職種」の2倍以上であること。(ただし、「その他職種」の平均賃金が、他の介護職員の平均賃金を上回らない場合は2倍以上でなくても良い)

④その他の職種の賃金改善後の見込み額が440万円を上回らないこと。(賃金がすでに年額440万円を上回る場合には、特定加算による賃金改善の対象にならない。)

下の図は、①経験・技能のある介護職員、②その他の介護職員、③その他の職種ごとでできる配分のイメージです。

厚生労働省 社会保障審議会 介護給費分科会 第168回(H31.2.13)

 

以上、2019年10月から始まる介護職員等特定処遇改善加算の概要とQ&Aについてみてきました。

 

今回の特定加算のポイントは、どのような基準で「経験・技能のある介護職員」のグループを設定するか、ということだと思います。

介護事業所とそこで働く職員とが納得する形で賃金が改善され、結果として、ご利用者や地域にとって魅力のある事業所になることを願っています。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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