【介護職員向けブログ】施設で暴れる認知症の人の対応について
こんにちは。
スター行政書士事務所の山田です。
このブログでは、私がこれまで20年以上高齢者福祉に関わってきた経験と介護スタッフ向けの研修でお話してきたことをお伝えしたいと思います。
このブログが、少しでも介護の現場で頑張る皆様のお役に立てれば幸いです。
目次
特別養護老人ホームや有料老人ホームの施設では、認知症の人の暴力が問題になることがあります。
誰でも叩かれたり、蹴られたり暴力を振るわれればいい気はしません。
それは介護職でも同じ。
私は、20年以上前ですが、実習先の方から「介護職は利用者さんから暴力を振るわれるのも仕事のうち」と言われたことがあります。
しかし、それは明らかに間違い。
合意なく暴力を振るわれていい仕事なんてありません。
では、施設で暴れる認知症の人の対応はどのようにすれば良いのでしょうか。
残念ながら「この対応をすればすぐに暴力はなくなりますよ。」といった方法はありません。
介護の現場では声掛けを工夫したり、対応する職員を代えてみたりと試行錯誤しながら、認知症ケアを実践していると思います。
しかし、認知症の人の状態はなかなか変わりません。
その結果、
「気分を落ち着かせる薬を処方してもらおう」
「精神科の病院へ入院してもらった方がいいのではないか?」
と話し合われることも少なくありません。
気分を落ち着かせる薬を服薬することや、精神科に入院することが決して悪いことだとは言いません。
しかし、薬や入院によるデメリットもたくさんあります。
そこで、薬や入院の前に、一度、施設のケアを見直してみてはいかがでしょうか。
私はこれまで500人以上の高齢者に関わってきましたが、突然暴れだす人に出会ったことはありません。
暴れる前には、不快やイライラした表情があり、その前には、イライラする何かしらの原因があります。
つまり、認知症の人の表情や不快に感じる原因を取り除けば、多くの場合、暴れることはなくなるのではないかと思います。
介護の現場で働く人は「ご利用者を観察することは大切」ということは知っています。
この「観察」ですが、主に体温や血圧、食事量、排せつ状況、転倒予防などに視点を当てて観察をしていることが多いのではないでしょうか。
これらは皆さん、結構意識をして観察していると思います。
しかし、認知症の人の表情は?
あまり意識をしていないかもしれません。
突然ですが…
「何も見ずに千円札を書いてみてください」
書けました?
何も見ずに正確に書ける人はまずいないと思います。
毎日のように見ている千円札ですが、どこにどのような絵や文字が入っているか、なんとなくしか分からないのではないでしょうか。
認知症ケアでも同じ。
表情を意識しないと見えてきません。
イライラしていないかな、不安そうな表情はしていないかな、など表情を「意識的」に観察して、ご利用者がイライラしているようなときは、気分を和らげるような声をかける、又は声をかけずに時間を空ける、など関わり方が変わってきます。
施設の中で介護職は一番ご利用者の近くにいる存在です。
もっとご利用者の表情を観察しても良いのではないでしょうか。
次に、「原因を取り除く」という点を考えてみたいと思います。
施設では、起床、食事、入浴、排せつ(介助)、レクリエーション、おやつ、就寝時間など、一日、一週間のスケジュールが決まっているところが多いと思います。
この施設のスケジュールにご利用者を当てはめようとしたときに、暴力がでることがあります。
例えば、入浴の曜日だから嫌がっているご利用者の服を脱がす、夜間のおむつ交換の時間だから寝ている利用者を起こしてズボンと下着を脱がす、など。
反対に、施設のスケジュールをご利用者に合わせる。
これが出来れば、暴力などはかなり減ると思います。
このようにお伝えすると、
「ただでさえ職員数が足りないのに、そんなことしたら余計忙しくなる。業務が回らなくなる」
という方がいます。
ただ、今までと同じような介護方法を継続して、叩かれたり蹴られたりするのを我慢しながらそれに対応する時間や精神的な負担を考えれば、少しずつでも変えていく方が良いのではないでしょうか。
以前働いていた特別養護老人ホームでは、時間をかけてご利用者の生活リズムに合わせて、職員の勤務時間やケアを再構築した結果、明らかに認知症の人のBPSD(暴力や情緒不安定など)は減りました。
「ローマは一日にして成らず」
介護施設も同じです。
ひとり一人のご利用者に合わせた施設になるためには、時間がかかります。
まずはたった一人、目の前のご利用者に合わせて施設のケアやスケジュールを変えてみてはいかがでしょうか。
そうすれば、必ず今よりご利用者の暴力は減るはずです。
以上、施設で暴れる認知症の人の対応について書いてきました。
最後までお読みいただきありがとうございました。